2019年末に稼働―大観覧車の再生というが―

2018年末に閉園した福岡県北九州市のテーマパーク:スペースワールドで稼働していた大観覧車がカンボジアで再生されることになった。日本では、90年代から次々と開園したテーマパークだが、一大消費地を控えた老舗のディズ二ーランドやUSJ以外の多くは一時の賑わいが終われば、21世紀にはいるや赤字の末に次々と廃園に追い込まれている。そんな中、北九州市のスペースワールドは大健闘の末の廃園であった。同園にあった大観覧車が、このほどアンコール遺跡群の観光拠点として知られるシェムリアップ州に運び込まれ、現在組み立て中。商業施設「Boxville」で2019年末から稼働するとのことである。同国観光省のお墨付きも得ているようだが、まさか世界遺産:アンコール遺跡群至近で設置ではあるまいか、という危惧がある。日本ならではあり得ない景観破壊になりかねない。
古代遺跡群の魅力を損なわないかーここ10年、観光リピーターの急減ー
ここにきてアンコール遺跡群への外国からの観光客は頭打ち、そして今年上半期に98年以来増加していた観光客数が初めての前年比減となる。アンコール地域以外の観光地となる先ずは海だが、その貴重な海岸線は中国の租借地なったり、中国資本の中国人のためのリゾート開発地となり、カンボジア人の行楽にも避ける地域に次々となっている。今年に入り、同国観光省は、カンボジア東北の内陸部のモンドリキリ州、ラタナキリ州への外国人観光客の増加を喧伝するが、観光的な魅力やインフラ、宿泊施設となるとアンコール地域や海岸線と比べたら数は微々たるもので、インフラやリゾート設備は進んでいない。また、アンコール地域も魅力ある観光施設を謳うが、同国の政府施策は微々たるもので、実情は民間投資の丸投げである。それが、本来の古代遺跡群の魅力をかえって損なっている面がある。
ここ10年、カンボジアの観光収入の便りは、中国、そして地の利を活かしたベトナムの観光ツアーである。それ故、ツアー客の増加が全体の観光客増になっていたが、かつてアンコール地域に魅了されたリピーターはほとんど姿を消したている。
アンコール・バルーンに次は大観覧車か

さて、かの大観覧車の設置だが、景観破壊の懸念がある。21世紀に登場したアンコールワットの西正面のアンコールバルーン、物見遊山気分のツアーには受けても古代遺跡やその偉大な文化に触れたいと訪れる人には愚劣以外の何ものでもない。アンコールワットの正面は真西、最上段の中央祠堂に上り、西正面に向けば、遺跡の向こうに大きな気球が宙に浮く。このバルーン、壮大な遺跡群を俯瞰する利点を強調しても、実はアンコールワットや西バライ、遥かクーレン山、トンレサップ湖をピラミッド型古代遺跡から望むなら、プノン・バケン遺跡からの景観が優れているし、観光に意味がある。
大観覧車の登場-責任あるメディアなら素直に喜べない―
率直に言って、アンコール遺跡群の魅力やカンボジアという国を知っている者なら、再生と喜んではいられない。
遺跡群から離れた場所の遊園地に一角にどうぞ、と願いたい。それにいくらスペースワールドの観覧車の復活といっても喜べない。ニュース性は日本国内に限られる。観覧車の再生というが、要は買い取られた中古品を稼働させるのである。これまで地元資本の遊園地の多くの観覧車のは直径10mほど、それが直径80m、高さ100mともなる大観覧車をカンボジア人が稼働・管理するのだから、ちょっと危い。カンボジアは空港、国有鉄道の管理・運営も外国企業に丸投げ状態である。またシェムリアップでは、以前にも日本なら小遊園地レベルのジェットコースターが軌道から飛び出し地面に激突、日本人女性を含めた死傷者を出している。
*画像:解体中のスペースワールドの大観覧車 画像:Webサイトより。