「小さな国だが、心広い国」のはずだった
かつて各国で寄港拒否にあったクルーズ寄港を認め自ら埠頭に出向いたフンセン首相は、「カンボジアは小さな国だが、心は広いのだ。」と豪語した。事実、4月12日までにカンボジアで確認された新型コロナウイルス感染者の6割を占めた外国人感染者は隔離措置中は無料であった。ここまで、寛容さを外国人に示す国は稀有の例である。
その後も感染者の確認は続くが、カンボジア国内での感染は4月12日以来0が続き、新規感染者はいずれも空港検疫を受けたカンボジア人帰国者か外国人である。
6月11日、君子?は豹変する
ところが、6月11日より「広い心」は当然豹変した。この日を境に外国人入国者に厳しい規制がかけられた。例えば、
・入国前72時間以内のPCR検査での陰性証明書。
・5万㌦以上の海外旅行保険証書
既に上記のどちらかなくて、日本人が3名、来た飛行機で追い返されている。
入国時3000㌦のデポジット。
・PCR検査の実施義務。
・陰性結果となるまで隔離措置
・同乗機に感染者がいた場合は、同乗者全員が2週間、指定ホテルで隔離措置、再び検査で陰性結果がでて入国となる。
上記の費用支払い全額を入国者が払うための入国時3000㌦のデポジットである。
これでは、「外国人は来るな!」というカンボジア政府の意思表示と多くの外国人が思った。事実、カンボジアには「帰国したいが再入国がままならない」で在留している外国人が多数いる。
追いうちのような外国人登録の義務化
さらに5月には突如、6月一杯までに外国人登録していない者は、ビザの更新を認めない、という指示が政府よりでた。これは在カンボジア外国人が居住するホテル、ゲストハウス、サービスアパートメントなどの大家さんが地区の警察に届ける義務があると。またそのための携帯電話のアプリでの登録も必要となって、在カンボジア外国人は四苦八苦、問い合わせやつながらない苦情が在カンボジア日本大使館にも押し寄せた。
こうしたカンボジア政府の外国人入国者への豹変は、外国人に評判が悪かった。が、カンボジア政府からすれば、外国人登録は諸外国では常識で、今までが甘かった。また、カンボジアで確認された新型コロナ感染者の6割以上が、外国人か海外から帰国者、無料でその世話では堪らない、ということであろう。
日本からカンボジア(外国)へ、出発前のPCR検査で5万円の出費は覚悟
この6月から日本から入国した人に義務付けられたPCR検査の陰性証明書、これが馬鹿にならぬ額である。現在、カンボジアに限らず、「72時間前以内のPCR検査での陰性証明書」がなければ、世界で日本人が入国できる国は皆無。それなのに検査と証明書の発行は、日本の保健証書が効かない全額負担である。再入国した人に聞くに「5万円の出費は覚悟」とのこと。PCR検査、72時間以内に結果が出て自己申告で申請すると3万円以上、さらに陰性証明書は1万円以上、何やかやと5万円出費となる。日本では、本来は医師の判断で保健所に申し込むというが、これは別の手続きが必要となる。
日本 自国民に海外に向かう自国民にPCR検査、陰性証明書を全額負担
―「ぼったくり」ではないか、という怨嗟の声が出るー
自国民のPCR検査に保険制度がありながら、自己申告者(海外へ出る者必携)には保険を適用しない、そんな国があるのだろうか!?
仕事や止むにやまれぬ事情でカンボジアに戻る自国民にこの仕打ち、まるで「ぼったくり」ではないか、という怨嗟の声がある。これでは将来、「Go To 海外」はあり得ない。海外旅行シフトの日本の旅行会社、壊滅的な打撃となること必定である。
デポジットの高額 評判の悪さに引き下げか
そこに、外国人は来るな!といったカンボジアの対応、さすがにそれは、カンボジアの首をも絞めかねない。そのためか、今回突如、2000㌦デポジットに引き下げが決定された。
隔離施設、お湯が出ないで虫が出る 苦情が大使館へ
なお、全ての入国者は、陰性結果がでるまで隔離施設だが、最低2泊は覚悟となる。お湯が出ないで虫が出る等の苦情が在カンボジア日本大使館に寄せられている。が、カンボジア人陽性者が隔離される州立病院は、冷房なしが当たり前である。
*掲載写真 Webサイト Khmertimes 8月5日付