


緑滴る港市:ワット・トモー
帰路は中央バライ(聖池)から東に延びる道をたどって都城:シュレスタプラのあったワット・ムアン・カオに向かう。道に突き当り、メコン河岸にラオスの近代寺院がある。敷地内の一角、集められた石造物のなかに都城址から発掘された大きなリンガを見る。ここから先は小奇麗なチャンパサック村、プール付きロッジや民宿がある。チャンパサック村北端、Pha Punからメコンを渡る素朴なフェリーで対岸のMuangへ。目指すはワット・トモー遺跡。国道13号に出て北上すること15分程、二つ目の橋を渡ると右手に世界遺産の看板。右折して赤土道へ入り、5分程で着く。
熱帯樹の深い森の先に遺跡がある。頭上高く樹冠を持つ熱帯樹の大木の森の中は意外に明るく開けている。灌木や藪に遮られないのは人の手が入っているのだろう。左手の低くなったところは沼地、やがて蛇神やラテライトの石積を見る。世界遺産を守る小屋もあるが、土曜日の昼間だというのに無人。やがて見えてくる深緑の木の間隠れに苔むした砂岩造りの遺跡、緑滴る森の遺跡は神秘的ですらある。遺跡は原型を留めないが、すぐ下の川に向かってラテライトの石積を階段状に廻らし、ここがかつての港市であったことを物語る。後に学術書をみるにワット・トモーは川がメコンと合流する地点の中洲に造られたことを知る。崩壊した遺跡の前に学術書に掲載されていた眉庇の浮彫が無造作に置かれていた。深彫の優品である。同行者が言う。「ラオスでは誰も盗らないんだね。」
