<必読>乗る前に読もう カンボジアの鉄道旅 体験ルポ

                           

2019年05月28日

先ずは、「まえがき」ー鉄道旅が3年前より快適になったとは思えない―

カンボジア南線のシハヌークビル駅と列車。2016年4月14日

2016年4月、開通間もないカンボジア南線プノンペン=シハヌークビル間の鉄道旅を取材した。その後も運行は続けられているが、開通当初とあって客車には警察官1名も乗車、座席横にはゴミ箱ならぬ黒のビニールゴミ袋も置かれ、一応観光列車の体裁が整えられていた。一度は乗ってみたいという鉄道マニヤや在住の外国人の乗車が見られたが、1年も経つと外国人バックパッカーが面白半分に乗車し、グーループで酔っぱらうといった光景も見られ、観光客からもそっぽ向かれたようで、よほどの鉄道好きでないと外国人も地元民も観光目当てで乗る人はめっきり減ったという。2019年4月22日、タイ=カンボジアの国際列車の開通式が行われ、Webニュース・サイトにも派手な見出しが躍ったが、未だ開通とは線路が連結されただけで、国際列車は画餅となっている。カンボジアの鉄道に乗りたいと思っている方は、先ずは下記のカンボジア鉄道旅のルポは必読です。記事3年前ですが、カンボジアの場合、状況が改善された(より快適になった)とは思い難く、その点を考慮してお読みくだされば幸いです。

カンボジア初 観光列車が面白い

―Discover New Asia No.10 P48 「シリーズ小さな旅」に掲載ー

待望の観光列車 先ずは乗るきゃない!

2000年の頃、日本の長寿番組「世界の車窓から」(1987年6月~現在)でカンボジアの鉄道を取り上げたことがある。当時、客車が動いていたカンボジア北線(プノンペン―ポーサット間)の車内と車窓風景の映像で、バイクより遅い速さの列車に途中から物売りのおばさんが飛び乗り車内で売り子となるのが印象的であった。その後も1日1回定期の客車が走っていたが、線路に障害物を置かれて止まると銃器を持った強盗が乗り込んだり、車両は天井や床に穴が開いていたりとカンボジア人でも乗りたがらない代物でいつの間にか、運行停止となった。
2009年からアジア開発銀行(ADB)、オーストラリア国際開発庁、OPEC基金等の支援を得て、南線(プノンペン―シハヌーク・ビル間)の線路や関連設備の修復工事が行われ、2014年半ばにはコンテナ輸送や石油類、セメント、石炭、砂利等の貨物輸送の列車運行が始まった。そしてこのほど、期間限定(2016年4月9日―17日)だが、旅客列車の運行が始まるという、実に2002年以来の14年ぶりである。この旅客列車、カンボジア国鉄の運営権を30年間保持しているロイヤル鉄道(オーストラリアの会社に経営業務委託)による運行で南線(プノンペン―シハヌーク間)の266kmを約8時間で結ぶという。運行は、気動車牽引の5両編成で、特等車はエアコン付き謳う観光列車である。

早速、観光列車を利用する シハヌーク・ビル発7:00 a.m.

4月14日6:30、駅に着くと既に乗客が十数人待ち、切符は普通3㌦、特等6ドル。やがて乗客が集まりはじめ、この日の特等乗車率は5割程度、日本人は私たちを含めて3人、中華系が数人、残りはカンボジア人であった。列車編成は、前後に気動車各1、コンテナ車各1、貨車1、客車は3台で特等の座席指定2両、普通1両で外観は変わらない。乗車時に係員に切符を見せ、案内を受ける。牽引の気動車は、6台所有のフランス・アルトム社製(1969年製造)と思われるが、黄色の塗装で見た目には新しい。7時きっかりに出発する。

特等はエアコン付向かい席の客車、横掛けソファーの普通客車

南線の特等車。 エアコンは家庭用で客車内前後に各1台。 2016年4月14日

特等の客車は二人掛け座席が向き合う。座席はウレタンマットの人造皮張り、縦幅が短く、外国人旅行者には狭い。網棚に荷物が置ける。エアコンは1両に4台だが、業務用ではなく家庭用。6割程度の乗車率で、係員と警官1名が乗り込む。走り出すや係員が空いた向かい座席の間に黒のゴミ袋が置いてゆく。そして売り子1名が乗合し、カップヌードルや缶入り飲み物と氷を入れたポリバケツを持って車両を回る。気温の下がる朝方、冷房も効き、走行車内は快適である。普通車は横掛けの座席、横掛けソファーでエアコンは家庭用1台付くのみ。プライバシーを重視なら“特等”がお勧め。

普通車の席は横長ソファーとなる。2016年4月14日

出発10分、車内はカップヌードルの匂いに充ちる

特等席 出発するや即席麺の匂いが車内に満ちる。カンボジア人の多くが食べ終わると寝始める。それを次の駅まで繰り返し、景色への興味は走り始めの最初だけの場合が多い。 2016年4月14日

出発するや乗客のカンボジア人たちは、早速自撮りに興じる。それが済むと食事タイム、車内はたちまちカップヌードルの匂いが充満。思い思いに景色を見ながら飲食を続ける人々も海岸線を離れ景色が単調になると多くはお休みタイム。同乗の係員と警官は、手持ち無沙汰に声高なお話し、どうも業務に関係ない世間話に興じている。ベトナムでは大声で話す者を「カンボジア人のように話す。」と言われるが、旅情に浸るには迷惑な話である。

コンポンソム半島西海岸を往く

駅を発った列車は、日本支援の経済特区を左に見て、やがて風光明媚なフンセンビーチ沿いを走る。このビーチ、近年整備されてベンチが並ぶが、未だ行楽客は稀。が、シハヌーク・ビルではオートレスビーチの次に注目されることは確実である。弓なりの白砂のビーチを区切る岬には原油備蓄場、岬を回り込むとカンボジア唯一の火力発電所が現れる。シハヌーク・ビルから線路に並行して走る車道もここまで。半島西海岸、旅行者が訪れることは稀、客車運行によって初めて知る地元民も多い。灌木林を縫って進む列車、コンポンソム半島の付け根を東に回り込み、やがて国道4号線(集落Ver Renh)を横切る。火力発電所からここまで集落を見ない。

ボコール山麓-沿線屈指の景勝地

車窓からプノンボコールと山麓の森

行く手の左に見えるドムレイ山系はその名の通り、山脈が群象の並びに似る。海底の隆起で地上に現れた砂岩層が侵食された山系、緩やかな高原状の山並みが山際で少し盛り上がると、急崖となって落ち込む姿は、象の長き鼻を垂らす姿に似る。象の並びのなかでその頭部を最も高く上げたのがボコール山(標高1079m)、頂き背後の高原はフランス統治時代に開発された冷涼な保養地(ハイランド)で知られる。ボコールの急崖から山麓に拡がる手付かずの広大な灌木林帯、南線屈指の景勝地である。やがて左車窓に山並みが迫ってくるやカンポットは近い。コンポンバイ川の鉄橋を渡ると円錐形の屋根を設けたカンポットの駅が見えてくる。

カンポット駅に着いた列車。遠く気動車の先にプノンボコールが見える。2019年4月14日。

カンポットでの下車がお勧め

カンポットの駅に着いたのが9時半。シハヌーク・ビルから2時間半の旅である。乗客全員が外へ出る。見ると、係員が車内のクラーをリモコンで消して回る。駅舎には欧米人をまじえた十数人の乗客と客待ちのトゥクトゥクが並ぶ。地元の乗客の多くはカンポット名産のドリアン売りを囲んで人の輪をつくる。「ああ、こりゃたまらん。カンポットを出るや列車内はドリアンの匂いが充満する。」それに車内は家庭用エアコン、ぬるめの暑さとなるだろう。カンポットから先、コンポントラッチ付近の石灰岩地形の景観は期待できるが、後は概ね単調な景色が続く。停車駅の待ち時間込み8時間の列車旅はきつい。単線のため、プノンペン発の列車とはタケオの駅で待ち合わせとなる。実はこの日、プノンペン発の列車はタケオ=カンポット間の踏切事故(信号機無し。列車確認なしの乗用車と衝突。)があったことをニュースで知る。

特異な屋根のカンポット駅。鉄道、駅舎もフランス統治時代のものを改修。 2016年4月1

観光列車、1度は乗りたい、2度目は?

カンボジア初の観光列車、鉄道マニアならずとも一度は乗りたい。2時間半の旅なら、景観だけでなく利用する人々の姿も一興である。が、多くの観光客を呼び込む列車旅となると課題があり。料金は地元民配慮の3、6㌦だが、安くとも片道8時間なら移動手段として列車は路線バスと端から競争にならない。観光列車で脚光浴びるなら、料金値上げでも特等の観光仕様―リクライニングシート、業務用エアコンやカフェ併設等―の列車編成が必要。観光客が求める列車旅、先ず “旅情”である。長時間でも快適な旅が約束されて、初めて利用する。今回のカンボジア初の観光列車、地元民配慮が妥協となって、中途半端な感がある。4月9-17日の試験運行を終え、4月30日から再開されるという。

カンポットは、落ちついた優雅な旧港街。コンポン・バイ川左岸沿い中心街にはコロニアル建築が見られる。

付記 終わりに

率直に言って、開通直後に鉄道旅を試みたのは正解であった。「はじめに」で触れたように鉄道マニアの乗るといった鉄道旅以外、一般の観光客では言えば、カンボジア人すら乗車が少ない。カンボジアでは、地元レストランやカフェ、店舗同様に「慣れてくるとお客あしらいがぞんざいになる。」怖れがある。開通当初はWebサイトにニュース掲載が見られた南線プノンペン=タケオ=カンポット=シハヌークビルだった、ここ2年、鉄道の話題はWebサイトの旅行情報には、全く見ない。見られたのは、北線プノンペン=ポーサット=バッタンバン=シソフォン=ポイペトの鉄路改修工事の結果で一部区間運行と今年4月22日に行われたタイ=カンボジア鉄道の開通式であるが、同式典は行われても未だ運行が始まったという情報はない。

*上記記事の<先ずは、「まえがき」ー鉄道旅が3年前より快適になったとは思えない―>と最後の<付記 終わりに>は、Discover Neew Asia No10 P48 「シリーズ小さな旅」のルポに、読者の皆様に鉄道旅の現状ご理解ため、新たに加筆しました。

*参照:下記の文①をクリックするとWebサイトでDiscover New Asia No.10がそのままお読み板でけます。

① Discover New Asia No.10 (No.10の画像クリック)

旅情報誌:Discover New Asia No.10の 表紙

② ところで、タイ=カンボジア国際鉄道 走ってるの?

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